火曜日の戯れ言

もうあきらめていた「鬼平犯科帳」の新シリーズ、21世紀の始まりとともに、放送されました。鬼平ファンを代表し、こんな戯れ言をいってみます。

by しののめ

新シリーズ、無事に終了しました。シリーズを総括して人気投票したいと思います。こちらからお入りください。  by小太郎

第5回

「闇の果て」

5月22日

■今日のスタッフ

監督:酒井信行 脚本:田坂啓 撮影:藤原三郎 照明:中島利男

■今日のゲスト

船越英一郎(藤田彦七)、野村真美(おりつ)、岡崎二朗(渡辺八郎)、樋浦勉(吉兵衛)、井上ユカリ(おみね)、池本愛彩(お弓)

■今日のロケ地

・近江八幡「八幡堀」・・・深川の嶋やへ向かう平蔵のシーン。これで第9シリーズには皆勤登場。

・上賀茂神社・・・川端で自分を捨てた父母への心情を吐露するお弓。

・高尾「神護寺」・・・とぼとぼと石段を歩く藤田とそれを尾行する沢田・三井。

・酵素・・・渡辺八郎が潜む道場。「剣客」の小兵衛宅を板塀で囲んである。

・大覚寺大沢池・・・ラストシーン、舟上でうちわの平蔵と粂八、伊三次。

■今日のグルメ

猫どの特製の差入弁当。嶋やの台所を借りて作ったとか・・・

・川海老の塩焼き・紫蘇を刻み込んだ胡瓜もみ・中はふんわり外はしっかり、味噌を塗って軽くあぶった握り飯。つまんだ竹内同心も「ウン、いける」

■原作と映像の間に

 軽目に予習して臨んだ鬼平犯科帳#5「闇の果て」。ついに第9シリーズ最終回!ここまでの視聴率いかんで新作製作続行も夢ではないはずですゾ! 原作は文庫版19巻収録の「雪の果て」。季節を考慮してか「闇の果て」に改題。“闇”とは「男と女の間に横たわる“闇”」のことかも・・・

・鮒宗の宗六(藤田を見かけて声をかける→伊三次、藤田を一時引き取る→粂八)、忠吾(藤田と馴染み→伊三次・粂八、おみつ・お弓親子の世話を焼いている→粂八)の役回りを密偵ふたりに振り分け、新キャラの人物説明や連投(前回の忠吾主役回)を回避する措置が取られている。

・原作では「逃げた妻」の後日談として描かれているが、TVでは前作(藤田彦七:うじきつよし、おりつ:江口由起、おみね:佐藤恵利)との関連はない。

・原作よりもおりつの魔性、お弓おみつ母娘の情の深さ、友人藤田と御用との板挟みになる粂八に重心を置いた作劇となっている。

■よろず覚書

・人質の態でありながら渡辺と情を通じているおりつ。だが実の娘を捨てた罪の意識にさいなまれて再々夢にうなされる。

・今日の川のシーン(密偵号とすれ違う藤田彦七)も1話「大川の隠居」と同様の合成カット。ひょっとして1話と同時撮りか?

・後妻であるおみつを慕うお弓「アノ人もおとっつぁんもキライ。今のおっ母さんが好きなんです」。また藤田との生活に耐えられず里芋の葉で雨宿りする。伊三次「お弓ちゃんじゃねェか」

・戻ってきた藤田、お弓との折り合いからか嶋やへ一時身を寄せる(今回も隠し部屋が登場)。

・和泉屋への出入りの再開の口利きを粂八に頼む藤田。が藤田は和泉屋の見取図を吉兵衛に渡してしまう。吉兵衛役の樋浦氏、表と裏の使い分けが絶品。

・“事”に及ぶ前に妻と娘に金とかんざしを残し、後を粂八に託す藤田。藤田に意見する粂八、いや蟹江氏の表情、語り口、仕草はまさに「おとな」を感じさせるゥ〜

・煙にまかれるおりつの表情からは、己の流転の境遇への諦念が、藤田に「逃げて下さい」からは、かつて愛した夫への惜別の情が・・・そして自ら過ちに決着をつけるように炎の中に消えていく。

・蕎麦屋を始めることになったおみつと仲良く歩き出すお弓、「これでイイのさ、世の中というものは・・・なァ粂」と自分を責める粂八を慰める平蔵で「闇」に光が差し込んでくる。

■総論

前妻の色香に娘も後妻も捨てて災いの渦中へ身を投じていく馬鹿な男と、毒婦に堕ちたつもりでも常に娘の影に追われて安らぎを得ることができなかった薄幸な女の哀れな物語。ただしかなり想像力を働かせ深読みしての解釈ですコレは。ちょっとこの映像からだけではこの解釈を導き出すにゃ「情報不足」か。ゲストが野村真美だけに好意的に解釈してるのか>ワシ?藤田も渡辺も迷ったおりつの「魔性」、ウ〜ン迷ってみたい・・・

第4回

「一本饂飩」

5月15日

■スタッフ

監督:小野田嘉幹 脚本:野上龍雄 撮影:藤原三郎 照明:中島利男 助監督:酒井信行

■ゲスト

寺内武兵衛(石橋蓮司)、与市(山西惇)、鳥平(丸岡奨詞)、豊島屋亭主・元助(芝本正)、元助の女房・お静(酒井雅代)

■今日のグルメ

1.いわずと知れた「一本饂飩」。最後、クレジットで「協力:手打そば 嵐山『戸隠』」とあったので、劇中のうどんを作ってくれたところでは? 要探索だな・・・

2.三崎の産の雄の鮑。三次郎が腕を振るう「鮑百珍」・・・刺し身、水貝、酒蒸し、踊り焼。一度は食べそこなう忠吾、一件落着、後平蔵と共に雪辱戦へと向かう。

■今日のロケ地

・八幡堀(忠吾昼寝シーン、おまさ彦十に聞き込みの結果をきく平蔵。今シリーズは八幡堀の出番が多いなぁ)

・上賀茂神社(ほろ酔いの忠吾、殴られて気絶する)

・大覚寺(ラストの平蔵vs武兵衛シーン)

■原作とシナリオの間に

 タイトルから原作の「男色」をはずしてあるだけに、ソノ描写は極力押さえてある感じ。事件の発端からして「男色」がらみでなくなっている。原作では武兵衛の1stインプレッションで忠吾にモーションをかけ、盗めとは関係なく己の色子として忠吾をGetしたことになっている。TVでは、豊島屋でもりそばをオーダーした武兵衛に忠吾自ら係わり、根掘り葉掘りヘンな勘ぐりをしたばかりに、盗めに差し支えると判断した武兵衛に拐かされるという展開に変更されている。また原作では囚われのままの忠吾に対し、TVでは少ない(!)知恵を振り絞って、誘拐犯たちを翻弄するという「忠吾奮闘編」として脚色されている。原作の、幽閉されていながらも三度三度出される食事が情けないが“旨い”と思うような忠吾像も捨て難いが、奮闘編もなかなか見ごたえがあった。特に忠吾ファンにはオススメします。

■よろず覚書

・冒頭役宅での同心や密偵たちの勤務ぶりを紹介、また稽古中の胴着姿も披露する沢田以下。

・今回は忠吾の「セクハラ」が全開(笑)。手はさするわ、尻は撫でるわ、挙げ句は抱きつく始末。(1)茶汲み女に(2)豊島屋の前で日傘を持った女に(3)神社の境内で町娘ふたりに・・・と暴走してます、この男。

・由井屋、伊勢屋で武兵衛にニアミスする平蔵、何かひっかかるものを感じる。恐るべき“勘ばたらき”。しかしあんなに同心を引き連れて市中見廻りすんのかな?

・忠吾が閉じ込められる「地下牢」のセットが秀逸。スモークが立ち込める中、差し込む月光。

・忠吾「俺は男に惚れられたのか!?」妄想シーンでは耳を蓮司にしゃぶられる尾美氏。

・武兵衛の配下・与市は今回の要注意人物。抜き襟、くねり腰の歩きに「保毛尾田保毛男(とんねるず石橋貴明演ずるホモキャラ)メイク」。地下牢で忠吾を殴る仕草もナヨナヨ(爆笑)。

・武兵衛の「経営コンサルタント」の手腕もなかなかのもの。節税対策のアドバイスも堂に入ったもの!

・平蔵の夢まくらで助けを乞う忠吾。愛すべき“うさぎ”のために全力を尽くす平蔵以下同心、密偵たち。

・幽閉中、自分のふんどしを(まるで「一本饂飩」のごとく)川に流してサインを送る忠吾。結果、平蔵がおまさの聞き込みと彦十の話と合わせて「豊島屋」を手繰り出す結果を導いた!

・武兵衛は足が悪いと見せかけるため常に携行している杖は仕込みになっている。

・腹をくくって「ひと芝居」うつ忠吾。過去かかわりのある大盗賊の名を列挙して「裏の盗め人(口会人?)」を装うも、縛られたまま。しかし最後の捕物シーンで活躍、面目を施す。

■総論

 さすがタイトルからはずされただけあって「同性愛描写」は抑え気味。ただせっかく蓮司を使うンだから、そのあたりを“濃厚”に描いて欲しかったもの。忠吾の妄想シーン、由井屋訪問時の「遅くなってゴメンなさい」のオネエ言葉はイケてました、マジ。どうせなら原作のような忠吾の尻をさするとか、吐き掛けられたツバをうまそうにねぶるとか・・・ゴールデンタイムぢゃムリやわね、やっぱ。開き直った忠吾の「俺だってこの道では“ソレ”と知られた男だ」発言も爆笑モノでした。ただし奮闘した結果、男色家に監禁されていてしかもふんどしを付けていなかったために「男の操」をからかわれる始末に・・・このテイストだけははずせませんなーこのお話は。

  来週はいよいよ最終回「闇の果て」編です。次回予告で船越英一郎と野村真美のふたりを見たカミさん「『渡る世間は鬼ばかり』じゃん」とぽつり(笑)。でもわたしの心はすでに来週の放送後「次回予告」へと・・・高鳴る期待!


第3回

「男の隠れ家」

5月1日

■スタッフ

監督:吉田啓一郎(第1シリーズの#8「さむらい松五郎」、#13「笹やのお熊」演出以来の登板!) 脚本:田坂啓 撮影:江原祥二 照明:中島利男

■ゲスト

玉村の弥吉(地井武男)、吉野屋清兵衛(小野武彦)、お里(紅萬子)、川野良岱(楠年明)、亀屋主人(結城市朗) 

■今日のロケ地

・仁和寺(弥吉を訪ねてくる吉野屋を見張る念仏講の彦十)・中之島橋(弥吉を尾行するおまさと彦十)・八幡堀(化け侍を尾行する沢田と忠吾、ごろつき浪人を叩きのめす平蔵)・西ノ湖(釣りをする平蔵にすがる弥吉・・・「剣客商売」鐘ヶ淵の舟着き場と同じロケ地)

■今日の『空想』グルメ

・鯵塩焼きで冷やを一杯・・・とは、尾行中の忠吾の妄想。軽くあしらうおまさが笑える。

■よろず覚書

・今回は回想形式で叙述されるパターン(原作は違う)。鬼平では珍しい。

・吟味場から牢へ戻る途中で「釘」を手に入れる弥吉。おーい牢番!ちゃんと掃除しておかなくちゃまた牢破られるゾッ。

・牢内の神棚の「灯明」のエピソードはTVオリジナル。忠吾「(死罪が決まった者の)首がとんだとたんに灯明が“フッ”と消えるそうだ」。忠吾と弥吉のシーンにいいアクセントを加える効果が出ている。

・聞き込みのために人手不足の亀屋(うなぎ屋。原作では蜆汁が名物の店)の女中を買って出るおまさ。

・吉野屋は婿養子の身。家付き娘のお里(店の者からは“お家さま”と呼ばれている。狆を飼っている)には頭が上がらず、奉公人にも軽んじられている。そんな彼の「変身願望」を満たしてやる弥吉、口八丁で吉野屋の絵図面を催促する。

・暗闇に翻る弥吉の黒装束、肩身の狭い想いをしてきた清兵衛のストレスを「盗め」で晴らしてやる。ざんばらお里、とたんにしおらしくなる。

・尻っ端折り姿も粋な吉右衛門!にお縄を受ける弥吉、潔く観念する本格派。

・回想シーンが終わると牢内の神棚に灯明が灯っており、それを見た弥吉は動揺を隠せない。そして突風に掻き消される。

・自ら仕置きに出向いてきた平蔵、鬼神のような表情で“引導”を渡す。→平蔵「おい弥吉、早く逝かねェかい」。一旦解き放たれたものの、【鬼の目】に脅え再び平蔵の元へ舞い戻る弥吉は一度は突っぱねた(「あっしにイヌになれと?イヌになる位ぇならこの体、八つ裂きにもなりましょう」)密偵を自ら志願する。→平蔵「早く俺の舟に乗らねェかい」・・・クゥーッ、痺れるねェこのセリフ!

・今回「スローモーション」を効果的に使用(堀端で大立ち回り、吉野屋に忍び込む弥吉、刀を振りおろす平蔵etc.)。また平蔵の「鬼」の部分(忠吾「おかしらは怖〜いお方だぞ」)をモノクロ処理で表現。

■原作とシナリオの間に

 前述の通り、視聴後に原作を読んだ訳だが原作をうまくまとめて映像化し得ていると評価したいです。聞き込みのために初回の店に手伝いを申し入れたりする(おまさ)のは少々突飛な印象も否めないが。ただ原作とは微妙にキャラの行動などに改訂が施されている。

○吉野屋に忍び込むこと・・・原作では事前に弥吉が清兵衛に耳打ち、TVでは内緒で決起。

○原作では弥吉を見かけて火盗に通報するのは泥亀の七蔵。TVではおまさと彦十とっつぁん。

○登場する与力・同心・密偵が全く異なる。

 原作:佐嶋、小柳、松永、桑田、酒井、駒蔵、庄吉、七蔵

TV:沢田、木村、おまさ、彦十  ※小林のみ両方に登場

 視聴よりも原作が先か後かで印象はだいぶ違うかも知れないけど、今回は前回「一寸の虫」の改訂と比べてもきわめてTV向けに原作を脚色されていて好印象を持ちました。この話にしても「一寸の虫」にしても何故ドラマ化されずに残っていたのか、はどうやら原作通り映像化するにはかなりストーリーの枠組みやキャラクターの行動原理を整理・再構成する必要があった事が一因かもしれません。再構成した映像作品が果たして「池波世界」を踏み外していないかも、大きなハードルでもあるでしょうし。

第2回

「一寸の虫」

4月24日

■今日のゲスト

火野正平(仁三郎)、高橋昌也(船影の忠兵衛)、高橋長英(鹿谷の伴助)

■今日のスタッフ

脚本/古田求 監督/小野田嘉幹 撮影/藤原三郎 照明/中島利男 製作主任/高坂光幸

■今日のグルメ

・おまさが入れた一服の「お茶」。しみじみと平蔵への忠義を誓う仁三郎。

・五郎蔵、三次郎と酌み交わす「末期の酒」と「軍鶏鍋」。

■今日のロケ地

今回も滋賀県近江八幡市の「八幡堀」ぐらいしか判んなかったなぁ、仁三郎に急ぎばたらきを持ちかける伴助のシーン。ちなみに次回予告にも登場。

■よろず覚書

A.今回のゲストの正ちゃんのいでたち。ヒゲあり、羽二重なし(笑)。

B.娘・おみのが唄っていた手鞠唄「いちじく人参山椒にごぼう・・・」を口づさんで出陣する仁三郎。「老盗の夢」編の蓑火の喜之助よろしく、伴助はじめ次々に外道を手にかけていく。

C.忠吾(=尾美としのり)もかーなーり痩せたけど、久々に見た高橋昌也も老けた&痩せたなぁぁぁぁ。

D.五郎蔵のセリフ「やったねぇ、やんなすったねぇ仁三郎さんッ!」・・・っちゅーことは仁三郎の心情や覚悟を事前に知っていたの?そうと知ってて五鉄で「覚悟」について語ったの?

■原作とシナリオの間に

1.いきなり冒頭から捕物シーンで原作にない“飛び道具”が登場。平蔵を庇って撃たれる仁三郎。

2.仁三郎には死に別れた女房との間に生まれたひとり娘・おみのがいることに。妹夫婦「橘屋(「加茂の月」という薄焼煎餅が名代・・・と原作に)」の養女として育てられている。これはそのまんま忠兵衛の設定。

3.伴助は娘のことをネタに盗めに仲間入りを強要(先週と似てるゾこの展開)。原作では忠兵衛の娘を惨殺して苦痛を与える復讐が計画されるがドラマでは、船影の盗めに合流すると見せかけ、その際に忠兵衛自身を殺す計画となっている。原作ではこの計画を知っているのは仁三郎と伴助のみ。ドラマでは伴助一党はすべて船影の盗めが気に入らない連中という設定に。

4.原作で仁三郎にアプローチしてくる悪徳同心・山崎庄五郎は登場しない。

5.平蔵と忠兵衛はお白州が初対面。江戸入りした忠兵衛は偶然五郎蔵が発見、マークされる。自分がかつて船影の配下だったことをおまさにもらす仁三郎。原作では後日談として船影と仁三郎の関係が明るみになってくるという設定。

6.五鉄で五郎蔵の密偵としての「覚悟」を聞いて「目が開かれる」思いの仁三郎、金釘文字で盗めの筋、娘のことなどを書き置く。原作では「読み書きが多少できたはず」なのに何一つ書き残さず、己の胸にすべてをしまって死地に赴くことになっている。

7.白州にて尋問される忠兵衛、かつての配下・仁三郎のことを“覚えていない”!!と・・・

■総論

 原作を読まずに今回のドラマを視聴していたとしたら、それはそれでイケてたと思います。最後まで大恩あるかつてのかしらに忠誠心を尽くす男気と、そんな配下がいたことすら覚えていない当の本人・・・ある種の「人の世の無情」がにじんでいるとは思えませんか? また、映像作品を抜きにして原作を読み返してみると、いま一つストーリーがこなれていない感も漂ってます。ただ事件の前に平蔵と忠兵衛が解逅していた部分やお白州での「そんなこと(かつての配下・仁三郎や伴助のこと)までご存じでしたか」な部分に味わいがあるのにそれがないのも少し残念な気がします。寡黙ですべてを胸に秘めて行動する仁三郎像も捨て難いですが、火野氏にあわせて造形された仁三郎像(戸口につっかい棒をして、何げない風を装いつつやにわに刃をふるうあたり)も痺れるし・・・今回は評価が難しいですワ。「必殺」時代に火野氏が歌う挿入歌まで作詩した盟友・高坂光幸監督(現・製作主任)たちとの現場はさぞ賑やかだったことでしょうな。

■概要

 はっきりいって今回は前回以上に賛否両論別れるでしょうね(笑)。原作重視派VS映像作品愛着派に・・・原作では、昔恩義を受けた本格派の船影の忠兵衛のために命を賭ける密偵・仁三郎の孤独な葛藤と三ケ条の金看板を今なお維持している忠兵衛を描いており、一方映像化作品では原作の設定をかいつまんで散りばめ、仁三郎の平蔵と忠兵衛への忠誠心の深さを中心に描いたものとなっている。忠誠心を判りやすくかつ一本気な仁三郎のキャラ描写を深化させたために原作から乖離してしまった、というのが実情という気がしないでもないなぁ・・・

第1回

「大川の隠居」

4月17日

■鬼平第9シリーズ 1話 スペシャル「大川の隠居」H13.4.17 19:00〜

全体の構成は原作の「大川の隠居」をメインに「掻堀のおけい」とその後ろ盾で上方の大盗・生駒の仙右衛門が登場する「流星」をアレンジした作品となっています。平蔵を苦しめるために火盗の関係者の殺戮を繰り返す(「流星」より)ところ、五郎蔵のかつての配下・砂井の鶴吉がおけいに嬲り者にされている(「掻堀・・・」より)シークエンスなどはオミットされています。

■ゲスト

大滝秀治(浜崎の友蔵)、平淑恵(掻堀のおけい)、財津一郎(生駒の仙右衛門)、深水三章(薮原の伊助)、中田浩二(鹿山の市之助)、本田博太郎(本田博太郎)

■スタッフ

監督/小野田嘉幹、脚本/田坂啓、撮影/石原興、照明/中島利男

■今日のグルメ

・鯉の塩焼き・猫どの特製白粥

■今日のロケ地

・大覚寺の大沢池・桂川松尾橋付近・近江八幡市の八幡堀・伏見松本酒造の酒蔵

■トピックス

・注目のナレーションは能村太郎ことフジテレビプロデューサーの能村庸一氏。氏自身のプロデュース「隠密奉行朝比奈」でナレーターデビューして2度目の登板?といったところか。故・中西龍氏の硬質でいてドキュメンタリックな語りが懐かしいなぁ。

・先週発売のテレビ雑誌「TVステーション」に見開きで鬼平を特集してます。隔週発売の雑誌なのでまだ書店に残っているかも。モノクロなのは残念だけど、昨日の「大川の隠居」はじめ全5話のスチールが小さいものの掲載されてるのが特筆もの。ゲストのチイチイや正ちゃん、船越栄一郎らの写真が拝めますゾ。

・前シリーズでは、平蔵の息子・辰蔵の放蕩ぶりに振り回されて青息吐息の目白台の長谷川家用人・松浦役を楽しませてくれていたコメディアン・小島三児氏が62歳で逝去。まだお若いのに残念なことです。ご冥福をお祈り申し上げます。

■原作と映像の間に

1.開幕から登場の仙右衛門は原作では一度も江戸には現れず、翌夏大坂町奉行所に捕縛される。

2.友蔵と庄太郎とのシーンが多い。

3.風邪で伏せっている平蔵の「盗み酒」を忠吾が“助けばたらき”する。

4.煙管が盗まれたことを映像作品では小林と酒井に打ち明けている。原作では久栄のみにもらす。

5.友蔵と粂八の盗っ人談議を鶴やの隠し部屋から注視する平蔵とおまさ。原作では粂八の報告の描写しかない。

6.友蔵のかつてのお頭・飯富の勘八の息子、庄太郎がおけいの“エジキ”となっている。

7.友蔵は庄太郎の母・おさきに惚れていたので勘八亡き後、庄太郎の面倒を見ていたと平蔵に告白。

■よろず覚書

・オープニング映像はなし。いきなり本編が始まる。

・原作での友蔵“日増しの焼竹輪”をそのまま地でいくようなメイクの大滝氏が見事な千住節を披露。すばらしい。舟も本当に漕いでいるから秀治はスゴいぞ。

・川を行き交う舟のバックの酒蔵や寺は合成カットとみた?

・船宿加賀屋の女将・お浜役に故・高橋悦史氏の未亡人・光代が扮している。佐嶋与力役で長年貢献してくれた高橋氏へのオマージュ的措置とのこと。吉右衛門はじめスタッフ、キャストの応援もあって実現したキャスティングだとか。

・医師井上立泉役に故・牧冬吉氏の後を丸坊主の徳田興人が。伏せっている平蔵にタバコを禁じ、煙管に封印まで施す。

・役宅へ忍び込む友蔵の視線となっているカメラワークが秀逸。久栄が視野に入るや物陰に隠れるなどリアリティのある描写になっている。

・前作「流星」時よりも一層“ハリボテ”チックな隠居が登場(笑)。原作にある通り大きな冷たい目が平蔵を見つめると、さしもの鬼平もギョッとする?

・TBS「大岡越前」では忠相の貞淑な妻・雪絵役が持ち役の平淑恵が、若い男をたらしこみ実父や友蔵の裏の顔までバラした揚げ句盗みの道へ引き込もうとする悪女を好演。ちなみに前作では小野田監督夫人の三ツ矢歌子がおけい役に。さらにちなみにラス殺陣時に仙右衛門配下で舟を漕いでいた清七役の平田一樹とはおそらく小野田・三ツ矢夫妻の次男。もひとつおまけに長男は同心・山田市太郎役の三ツ矢真之。

・終盤まで地味な演技で歯がゆかった本田博太郎、ラス殺陣前に手のひらでローソクをねじり消すあたりから本領発揮!中途半端な関西弁はいかんヨ、チミ。

・五郎蔵がおけいのことを思い出すきっかけとなるアイテムが「紙風船」。

・橋場の井筒・・・といえば「仕掛人藤枝梅安」に登場する料亭? 梅安と心を通わすおもんが女中として奉公しているのも橋場の「井筒」だったよーな。

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